どーも、はたけのです。
こちらの記事は「編集者が教える1分日本語教室」の第1弾。
日本人が意外に知らない、日本語の基礎技術を3分読了サイズで紹介していくコーナーです。
今回は、主語の後ろについて名詞や形容詞、動詞を導く助詞「が」「は」の違いについて説明します。
- あのパン”は”おいしい
- あのパン”が”おいしい
この2つの違いが分かりますか?
記事を読んだあとは、この「が」や「は」の文中での役割と、両者の意味の違い、使い分け方をサクッと説明できるようになりますよ。
目次
「が」「は」の使い方を間違えるとこうなる
突然ですが、下記の文章を読んでみてください。
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんは住んでいました。
おじいさんが山へしばかりに、おばあさんが川へせんたくに行きました。
おばあさんは川でせんたくをしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃は流れてきました。
誰もが知っている昔話「桃太郎」の書き出しですが……
なにかおかしくないですか?
上の文章では、「が」「は」を意図的に間違えて使っています。
一文だけでは小さな違いに見えるかもしれませんが、連続した文章にしてみるとかなり大きな違和感を生んでしまう1文字なのです。
「が」「は」の正体は?文中での役割を知ろう
感覚的に、「が」「は」がどれほど大切かお判りいただけたと思います。
では、この「が」「は」の正体、文中での役割からまずは説明していきましょう。
さきほどの導入部分で、サクッと『「が」や「は」は助詞である』と述べてしまいました。
少し遅れましたが、ここで助詞とはなにかという説明を先にしておきましょう。
日本語における助詞とは?
- 品詞(単語の種類)のひとつ
- 単独で意味をなさない
- 活用(語尾の形が変化)しない
以上の要件を満たしたものが助詞です。
「が」「は」については、①と②は読んで字のごとくだとして、一応、③については解説しておきます。
日本語の活用なんて、真剣に考えた人なんてなかなかいないでしょうからね。
日本語の活用の例
「勝つ」という動詞を例にしてみました。
動詞「勝つ」の活用
- 基本形:勝つ
- 未然形:勝た(ねば)、勝と(う)
- 連用形:勝ち(ます)、勝っ(た)
- 終止形:勝つ
- 連体形:勝つ(こと)
- 連用形:勝て(ば)
- 命令形:勝て
これ、太字部分が「たちつてと」になっているのがわかるでしょうか。
母音に基づいて五段に変化するこの活用を「五段活用」と呼んでいます。
とまあそんな用語の解説はおいておいて、日本語の活用についてなんとなくでも理解しておきましょう。
本筋に話を戻しまして。
「が」や「は」は活用しませんね。(そもそも活用する語尾がありませんw)
「が」「は」は格助詞と呼ばれる
以上で、「が」「は」が助詞であることは説明できました。
が、助詞にはたくさんの種類がありまして、格助詞、副助詞、係助詞、接続助詞、終助詞……など、、、もっとあります。
(日本語の難しさは、助詞によってもたらされているといっても過言ではありません)
これら個々の意味は置いておくとしまして、今回説明する「が」「は」は格助詞にあたります。
この格助詞はたくさんの役割を持っているのですが、今回は1つの役割に限って説明しましょう。
今回説明する格助詞の役割
- 動詞や形容詞につながって動作や状態の主体(主語)を表す
例:私は行く、水が冷たい、など
「私は行く」なら、「行く」という動作と主体の「私」を接続し、「水が冷たい」なら、「冷たい」という状態と主体の「水」をつなげています。
さて、カンの良い方なら気づかれるでしょうが、この「が」「は」は別の格助詞に置き換えることができます。
「が」や「は」以外にもたくさんの格助詞があるのです。
たとえば、「私”も”行く」。
あるいは、「私”の”行く場所」というような形で使えば、「の」も格助詞として使えますね。
ニュアンスの違いはあれど、上に挙げた格助詞たちは、いずれも「私」という主格(主語)を、「行く」という動詞に接続しているのは同じです。
「が」「は」の違いは、”限定”をするかしないか
格助詞についての説明が終わったところで、ようやく核心です。
「が」「は」が持つ違いは、ズバリ、「”限定”をしているかしていないか」にあります。
例を出してみましょう。
記事の冒頭に出した、
- あのパン”は”おいしい
- あのパン”が”おいしい
の2文。
この両者の違いを視覚的に説明します。
まず、「あのパン”が”おいしい」の場合。
この文章の背景には「あのパン」以外のパンは存在しません。
この一文は、とにかく「あのパンがおいしい」ということを表現するためだけにつくられたものなのです。
さて、「が」が「は」にかわると……
「あのパン”は”おいしい」という表現では、おいしいパンがある裏に「別においしくない存在」が隠れています。
つまり、「パンはたくさんあるけれど……おいしいパンはこれだ!」と限定しているのです。
たとえば、パンを好きではない人が「あのパンはおいしい」と言ったら、
パンは基本的に嫌いだからおいしいとは思わないけど、あのパン”だけ”はおいしい!
という意味にとらえられますよね。
「が」「は」の違いを認識して使い分けよう!
最後に、「が」「は」の使い分け方を解説して結びにしましょう。
またあの文章が登場します。
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました。
おばあさんが川でせんたくをしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。
「が」「は」を強調しつつ正しい表現に直してみました。
ここには「が」「は」の使い分けのキホンが3つ隠れています。
「が」「は」の使い分けのキホン
- 文中で初出の名詞には「が」を使う
- 既出の名詞について、新たな事実を説明する場合には「は」を使う
- 既出の名詞について、既出の事実を繰り返す場合は「が」を使う
ひとつひとつ例をもとに説明してみましょう。
おじいさんとおばあさんが住んでいました。
↑最初の一文であり、おじいさんおばあさんともに初出なので、「が」(コツ①)
おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました。
↑おじいさんおばあさんはもう登場しているが、新事実が語られているので「は」。(コツ②)
おばあさんが川でせんたくをしていると
↑既出の事実なので「が」。(コツ③)
大きな桃が流れてきました。
↑大きな桃は初出の名詞なので「が」。(コツ①)
とまあ、こんな具合です。
なぜこんな3つのコツだけでどうにかなるのかというと
- 文中で初出の名詞には「が」を使う
↑初めて出てきたモノに対しては、事前の文脈が存在しない。そのため「が」を使う。
- 既出の名詞について、新たな事実を説明する場合には「は」を使う
↑新事実の説明なので、「は」を使って名詞を限定し、強調。
- 既出の名詞について、既出の事実を繰り返す場合は「が」を使う
↑既に分かっている事実なので、改めて「は」を使い限定して説明する必要がない。
というところですね。
この「が」「は」について、日本人のあなたなら、あまり意識して使い分けたことはないかもしれません。
でも、これほど大きな違いを文章にもたらしてしまうわけですから、用法に困ったときにはこの記事に書いた、基本に立ち返ってみてくださいね。